【家で映画 vol.3】『動くな、死ね、蘇れ!』

『動くな、死ね、蘇れ!』(ソビエト連邦/1989)

 

1989年に旧ソビエト連邦が制作した映画であり、1990年にはカンヌ国際映画祭カメラ・ドールを受賞している。暗そうな映画だが、予想裏切らず思いっきり暗い。(観る人は覚悟して観よう)

 

第二次大戦後、スーリャンという炭鉱町が舞台。街は収容所地帯として存在し、混沌としている。主人公は12歳の少年ワレリカは悪童であり、ロクでもないことしかしない。だが、それ以上に大人たちが狂っている。見終わってから気づいたが、まともな大人は1人もいない。そんな大人たちが社会を作っていて、そこで生きる子供が主人公なのだ。

 

繰り返すがワレリカはロクなことをしない。でも子供は悪戯をするし、その悪戯で社会に子供の意見を主張したいのだと思う。「こんな世界おかしい」と。

 

ワレリカは見ていてムカつくが、狂った社会でいい子になんてしていられない。世界は今にも壊れそうな微妙なバランスで成り立っている。それならこんな世界壊れてしまえばいい、でも自分はかわいい、痛い目にあいたくない。破滅的になっても、そこになりきれないのはワレリカに寄り添うガーリヤという少女がいるから。映画紹介でガーリヤは守護天使と評されているが、その通り彼女はワレリカの救いとなって存在する。

2人はともに12歳。淡い恋心が芽生え始めるが、腐った世界では恋心を語る気にもなれない。日本兵から聞いた歌に乗せるだけ、それがワレリカの今できる精一杯の表現だ。

 

エンターテインメント性はないので面白くない。ただこんな映画見たい日もある。少し前の腐った社会に生きた子供たちの疑似体験することは”たまには”悪くないんじゃないでしょうか。

 

(採点:★★★★★★★☆☆☆)

 

https://eiga.com/movie/42624/